労働基準法改正 時間外労働の上限規制 雇用保険免除 未払い賃金
文責 社労士・井戸 憲一郎

人事が抑えるべき2020年 労働基準法改正

2019年4月から、働き方改革関連法が順次施行されていますが、2020年もさまざまな法改正がなされています。
そこで今回は、人事が抑えるべき2020年 労働基準法改正についてご説明します。

2020年4月から以下の内容が変わりました。

 

2020年4月 主な改正内容

(1) 「同一労働同一賃金」(大企業のみ)
(2) 「時間外労働の上限規制」の適用(全ての企業)
(3) 64歳以上の社員の「雇用保険免除」廃止
(4) 未払賃金請求権の消滅時効が現行の「2年」から「3年」へ延長
(5) 「パワハラ防止関連法」施行開始(大企業のみ)

下記にて詳細をご説明します。

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ご相談ください、私たちが応対します。

(1) 「同一労働同一賃金」(大企業のみ)

働き方改革の一環として、大企業は2020年4月1日から、中小企業は2021年4月1日から施行されます。

「同一労働同一賃金」とは、正規雇用労働者と非正規雇用労働者の間の不合理な待遇差を解消することを目的としています。

企業には主に次の3つの対応が求められます。

(ⅰ) 不合理な待遇差をなくすための規定の整備
(ⅱ) 労働者に対する待遇に関する説明義務の強化
(ⅲ) 行政による事業主への助言・指導等や裁判外紛争解決手続(行政ADR)への対応
(ⅳ) 派遣労働者への「同一労働同一賃金」対応

(ⅰ) 不合理な待遇差をなくすための規定の整備

同一企業内において、正社員と非正規雇用労働者との間で、基本給や賞与などのあらゆる待遇について、不合理な待遇差を設けることが禁止されます。

(ⅱ) 労働者に対する待遇に関する説明義務の強化

非正規雇用労働者は、「正社員との待遇差の内容や理由」など、自身の待遇について事業主に説明を求めることができるようになります。
事業主は、非正規雇用労働者が企業に入社する時と在職中に求めがあった時には、待遇の差について説明をしなければなりません。

(ⅲ) 行政による事業主への助言・指導等や裁判外紛争解決手続(行政ADR)への対応

都道府県労働局において、無料・非公開の紛争解決手続きを行います。
「均衡待遇」や「待遇差の内容・理由に関する説明」についても、行政ADRの対象となります。
労働者がこの制度を利用した場合、対応が求められます。

(ⅳ) 派遣労働者への「同一労働同一賃金」対応

上記の(ⅰ) (ⅱ) (ⅲ) は、中小企業については2021年4月1日からの施行だと説明しましたが、
この(ⅳ) 派遣労働者への「同一労働同一賃金」対応
については、会社規模に関係なく2020年4月から施行されます。

具体的には、派遣元事業主(派遣会社)は

① 派遣先均等・均衡方式
② 労使協定方式

のいずれかの待遇決定方式により、派遣労働者の待遇確保を実現させなければなりません。

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(2) 「時間外労働の上限規制」の適用(全ての企業)

「時間外労働の上限規制」は、大企業では2019年4月より既に義務化されていますが、2020年4月よりは中小企業にも適用されることになります。

これまでは、【厚生労働大臣の告示】で36協定を締結すれば 法定労働時間に追加して労働させることができる時間は、1か月45時間、1年360時間の上限が定められていました。
しかし、臨時的に労働する必要がある場合は、36協定に特別条項を設けることで、制限無く時間外労働をさせることができました。

今回の改正で、法定労働時間に追加して労働させることができる時間は、1か月45時間、1年360時間の上限は変わりませんが、【厚生労働大臣の告示】であった上限が、【法律で規定】されたことにより、違反すると罰則が科されることとなりました。

また、36協定の特別条項についても、労働時間を以下の範囲内に設定することが義務づけられました。

 

36協定の特別条項 労働時間の上限

・ 1か月の時間外労働+休日労働の時間合計数が100時間未満
・ 2~6ヶ月の時間外労働+休日労働の時間の平均が80時間以内
(「2ヵ月平均」「3ヵ月平均」「4ヵ月平均」「5ヵ月平均」「6ヵ月平均」が全て1ヵ月当たり80時間以内という意味です)
・ 1年の時間外労働時間が720時間以内
・ 月45時間の原則を超えることができるのは「年間6ヵ月」まで

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(3) 64歳以上の社員の「雇用保険免除」廃止

平成29年1月1日より雇用保険の適用拡大が行われ、65歳以上の労働者も「高年齢被保険者」として雇用保険に加入することとなりました。

しかしこの改正には免除措置が設けられ、令和1年度までは64歳以上の方は保険料が免除されていましたが、2020年4月より、64歳以上の社員も雇用保険料を支払わなければならなくなりました。

(4) 未払賃金請求権の消滅時効が現行の「2年」から「3年」へ延長

民法で定める債権の消滅時効が原則5年に統一されることを受けて、賃金債権の消滅時効も同様に5年になります。
併せて、付加金の請求期間・退職手当請求権の消滅時効期間・賃金台帳等の書類保存義務も5年になります。
但し、経過措置として
賃金請求権の消滅時効、増賃金未払い等に係る付加金の請求期間は、当分の間は3年となります。

また、施行日以後に賃金支払日が到来する賃金請求権について、上記の新たな消滅時効期間を適用することになります。
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(5) 「パワハラ防止関連法」施行開始(大企業のみ)

企業におけるハラスメント対策が義務付けられ、大企業では2020年6月1日から、中小企業では2022年4月1日から施行開始となります。

企業に求められる対応は、主に次の2点です。

・ 職場におけるパワーハラスメント防止のために、雇用管理上必要な措置を講じることが事業主の義務となります
(適切な措置を講じていない場合には是正指導の対象となります)
・ パワーハラスメントに関する紛争が生じた場合、調停など個別紛争解決援助の申出を行うことができるようになります。

岐阜ひまわり事務所では、会社設立から助成金申請・許可申請・給与計算・労務管理まで
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