法定の健康診断

労働安全衛生法と言う法律で、会社は従業員に対して、医師による健康診断を実施するように義務付けています。
また、従業員も、会社が行う健康診断を受けなければなりません。

では、法律が定めている健康診断には何があるかをご説明します。

1.法律で決められた健康診断の種類

労働者の安全と健康を確保するための法律である労働安全衛生法では、次の健康診断を行うことを会社に義務づけています。

(1) 雇入時の健康診断
(2) 定期健康診断
(3) 特定業務従事者の健康診断
(4) 海外派遣労働者の健康診断
(5) 給食従事者の検便
(6) 特殊健康診断

以下、具体的にご説明します。

(1) 雇入時の健康診断

会社は、新しく労働者を雇い入れる際には、雇入時の健康診断を実施する必要があります。
ただし、3ヶ月以内の健康診断の結果を提出した者については、その受診項目は免除することができます。

雇入時の健康診断の項目

・ 既往歴および業務歴の調査
・ 自覚症状および他覚症状の有無の検査
・ 身長、体重、腹囲、視力および聴力(1,000ヘルツおよび4,000ヘルツの音に係る聴力)の検査
・ 胸部エックス線検査
・ 血圧の測定
・ 血色素量および赤血球数の検査(「貧血検査」)
・ 血清グルタミックオキサロアセチックトランスアミナーゼ(GOT)、血清グルタミックピルビックトランスアミナーゼ(GPT)およびガンマ―グルタミルトランスペプチダーゼ(γ-GTP) の検査(「肝機能検査」)
・ 低比重リポ蛋白コレステロール(LDL コレステロール)、高比重リポ蛋白コレステロール(HDL コレステロール)および血清トリグリセライドの量の検査(「血中脂質検査」)
・ 血糖検査
・ 尿中の糖および蛋白の有無の検査(「尿検査」)
・ 心電図検査

(2) 定期健康診断

会社は、常時使用する労働者に対して、1年に1回定期に健康診断を行う必要があります。
35歳と40歳以上の労働者を対象に、心血管疾患を予防するため、腹囲の測定や血液検査など、いわゆるメタボ健診も同時に行う必要があります。

なお、パートやアルバイトについても、1年以上引き続き雇用され、1週間の所定労働時間が正社員の3/4以上の者には健康診断を行う必要があります。

また、社会保険に加入している場合、35歳以上の方は、全国健康保険協会が実施する生活習慣病予防健診を受診することができます。
これは、全国健康保険協会の補助が受けられるため、7,000円位で受診することが可能です。

定期健康診断の項目

・ 既往歴および業務歴の調査
・ 自覚症状および他覚症状の有無の検査
・ 身長、体重、腹囲、視力および聴力の検査
・ 胸部エックス線検査および喀痰検査
・ 血圧の測定
・ 貧血検査
・ 肝機能検査
・ 血中脂質検査
・ 血糖検査
・ 尿検査
・ 心電図検査

(3) 特定業務従事者の健康診断

深夜業を含む業務や重量物の取扱い業務など特定の業務に従事する労働者に対して、会社は、 6ヵ月に1回定期に健康診断を行う必要があります。

(5) 給食従事者の検便

会社は、事業に附属する食堂や炊事場における給食の業務に従事する従業員に対して、その雇入れの際とその業務への配置替えの際に、検便による健康診断を行なわなければなりません。

(6) 特殊健康診断

有機溶剤や鉛などを取扱う業務や粉じんが飛散する場所での作業など有害な作業に従事する労働者に対して、会社はそれぞれ決められた一定期間内に特殊健康診断を行う必要があります。

2.健康診断実施後の措置

上記のような健康診断を行った後は、次に下記のような措置が必要です。

(1) 健康診断結果の記録

会社は、この健康診断の結果に基づき、健康診断個人票を作成して、これを5年間保存しなければなりません。

(2) 健康診断の結果についての医師からの意見聴取

会社は、この健康診断の項目に異常の所見があると診断された労働者の健康診断の結果に基づいて、その労働者の健康を保持するために必要な措置について、次の方法によって、医師の意見を聴かなければなりません。
①  この健康診断が行われた日から3か月以内に行うこと。
②  聴取した医師の意見を健康診断個人票に記載すること。

(3) 健康診断実施後の措置

会社は、健康診断の結果についての医師の意見を勘案して、その必要があると認めるときは、その労働者の実情を考慮して、次のような適切な措置を講ずる必要があります。
① 就業場所の変更
② 作業の転換
③ 労働時間の短縮
④ 深夜業の回数の減少等の措置
⑤ 作業環境測定の実施
⑥ 施設又は設備の設置又は整備
⑦ 医師の意見の衛生委員会、安全衛生委員会、労働時間等設定改善委員会への報告
⑧ その他の適切な措置

(4) 健康診断の結果の通知

会社は、この健康診断を受けた労働者に対して、遅滞なく、健康診断の結果を通知しなければなりません。

(5) 保健指導の実施

会社は、この健康診断の結果、特に健康の保持に努める必要があると認める労働者に対して、医師または保健師による保健指導を行うように努めなければなりません。

従業員はは、事業者から通知された健康診断の結果及び上記の保健指導を利用して、その健康の保持に努める必要があります。

受診する義務

定期健康診断は、会社へ法律上の実施義務が課されている一方、従業員にも会社が行う定期健康診断を受診する法律上の義務が課されています。

定期健康診断の受診を拒否しようとする場合は、自分で受診した健康診断の結果を会社に提出しなければなりません。

そのため、会社が指示した定期健診の受診を拒む従業員がいる場合は、自分で受診した健診結果を提出するよう指示するとともに、その経緯を記録に残しておきましょう。

自分で人間ドックを受ける等の理由で、会社の定期健診を受診しない従業員の場合も同様です。

なお、会社に従業員が指定する健康診断を受けさせる義務があるわけではないので、その受診費用を会社が負担する義務はありません。

会社と従業員の双方が納得できる定期健康診断のルールを就業規則等に定めるように心掛けましょう。

健康診断を拒否する社員への対応の仕方

労働安全衛生法は、労働者の受診義務違反に対する罰則は設けていませんが、企業は労働者に対して健康診断の受診を職務上の命令として命じることができ、受診拒否する社員に対しては、懲戒処分をもって対処することもできます。

健康診断の間の賃金について

一般健康診断は、一般的な健康確保を目的として企業に実施義務があるので、業務遂行と直接の関連があって行われるものではありません。

そのため、就業時間中に受診した場合の賃金については、労使間の協議によって定めるべきものになります。
ただし、円滑な受診を考えれば、受診にかかった時間の賃金を企業が支払うことが望ましいでしょう。

一方、特殊健康診断は業務遂行に直接関連して、労働者の健康確保のために実施しなければならない健康診断なので、特殊健康診断の受診のための時間は労働時間であり、賃金の支払いが必要です。

誰が健康診断の結果を見て良いか?

「健康診断結果に基づき事業者が講ずべき措置に関する指針」によると、関係者に健康情報を提供する必要がある場合は必要最小限とし、内容を適切に加工した上で提供する、としています。

この場合の「関係者」とは、健康診断の実施の実務に従事している者、人事労務部門の担当者、職場の管理監督者などを指します。

50人以上の会社では「衛生管理者」がこの職務につくことが一般的ですが、資格がない人でも健康診断の実務に従事することは可能です。

人間ドック

有名人の方ががんがんであることを人間ドックで発見したといったニュースをテレビ等で目にすることも多くなっています。

人間ドックも健康診断も現在の健康状態を把握し、健康異常がある場合に具体的に体の具合が悪くなって気づくよりも早く発見するために行いますが、検査する項目数が違います。
健康診断では10-15項目ですが、人間ドックでは50以上、プランによっては100項目の検査を行います。
例えば、健康診断では、胃がん、乳がんや前立腺がんなどのがんの検診が含まれていません。

しかし、 人間ドックの場合、会社が従業員に受診させないといけないという法的な義務はありませんので、法定の健康診断に留めるのか人間ドッグまで受診させるかは、会社ごとで決めていただければよいでしょう。

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