問題社員への対応の仕方

※ ここでいう問題社員とは、違法行為を繰り返したり正当な業務命令に従わない社員を言います。
社員の人格は最大限尊重されるべきであり、人格非難が許されるわけではございませんのでご注意ください。

ケース3 副業する社員への対応の仕方

副業を禁止している企業で、副業をしている社員に対して、いかなる処分ができるか?
について、ご説明します。

会社と社員が負う義務

雇用主と従業員は、雇用契約を結ぶことでお互いにいろいろな義務を負います。

雇用契約書に明示されていませんが、雇用契約に付随して実務上認められている各種の義務が存在します。
まず、会社と社員の各々が負う義務について確認します。

会社の負う義務

会社が社員に対して負う義務として、以下の3つが考えられます。

1.賃金支払い義務
当たり前ですが、会社は社員に既往の労働に対する賃金の支払い義務を負います。

2.安全配慮義務・健康配慮義務
会社の負う二つ目の義務として、
会社は社員の生命・身体の安全を確保するよう配慮する安全配慮義務や健康配慮義務(労働契約法5条)があります。

職場で社員がケガや病気にならないように安全に働けるようにしてあげる義務や、過労死や過労自殺などが起きないように配慮してあげる義務も含まれます。

3.職場環境配慮義務
会社が負う三つ目の義務は、
社員の人格が損なわれないよう働きやすい職場環境を整える義務(職場環境配慮義務)です。

社内でセクハラやパワハラの被害が発生しないように職場環境を整える義務の事です。

社員の負う義務

それに対して、社員が会社にお対して負う義務として下記の3つがあります。

1.労働義務(職務専念義務)
労働契約内で、労働の内容・遂行方法・場所などに関する会社の指揮命令に従って、労働を誠実に遂行する義務を負います。

2.企業秩序維持義務
会社による組織的労働の円滑かつ効率的な利用のため、組織体としての規律を遵守し秩序を維持する義務のことです。

この義務により社員は、会社内での規律ある言動が求められます。

3.誠実義務
社員は、会社との信頼関係を損なうような言動を行ってはならない義務のことです。
具体的には、
・ 信用保持義務
・ 秘密保持義務
・ 競業避止義務
が挙げられます。

これらの義務に基づいて、【副業をする社員への対応の仕方】について、以下ご説明いたします。

就業時間内での副業

就業時間内に副業をしている社員に対しては、先に述べた社員の負う職務専念義務に違反している可能性が高いため、当然に禁止または制限ができます。

また悪質な社員には、就業規則により懲戒解雇も可能になる場合があります。

しかし問題は、下記の就業時間外の副業です。

就業時間外での副業

原則として、就業時間外の副業は、制限することができません。
その理由として、私生活の領域は、会社は口出すことができず、如何に過ごすかは社員の自由だからです。

例外的に制限・禁止が可能な場合
① 企業秩序を乱すおそれがある場合
② 労務の提供に支障がある場合

が例外的に考えられます。

対処の仕方

就業時間外での副業で、上記の①や②に該当しなければ、副業を制限することは難しいと言えます。

そこで、就業時間外での副業を制限することが難しいのであれば、せめて予防に努めるべきです。
以下のプロセスを経ることをお薦めします。


① 就業規則に、「副業する際の報告義務+懲戒事由」 を、定めておく

② 従業員より副業の申請をしてきた場合は、「聞き取りと検討」 を実施する

③ 容認することができない副業を開始したのならば、「面談・注意・指導」 をする

④ それでも副業を辞めなければ、「退職勧奨や懲戒処分」 を検討する

下記、具体的にご説明いたします。

① 就業規則に、「副業する際の報告義務+懲戒事由」 を、定めておく

副業を禁止する旨の抑止効果とするためと、看過できない副業を開始したときの懲戒処分をする可能性を残すために、就業規則に、「副業する際の報告義務+懲戒事由」を定めておくべきです。

② 従業員より副業の申請をしてきた場合は、「聞き取りと検討」 を実施する

従業員より、①の報告義務に基づいて、「副業をしたい」旨の事前申請をしてきた場合は、まずは「聞き取り」をすることが必要です。

そして、「聞き取り」に基づいて、「検討」が必要です。


▲ 例外的に制限・禁止が可能な場合

上記に記載しました、
① 企業秩序を乱すおそれがある場合
② 労務の提供に支障がある場合
に該当しないかを検討する必要があります。

具体的には、

・ その副業が競業避止義務に違反していないか?
・ その副業をすることにより長時間労働にならないか?
・ その副業が社会的信用を害していないか?
・ その副業により会社の秘密漏洩に繋がらないか?

これらに該当するのであれば、例外的に、副業を制限したり副業を禁止したりすることのできる可能性があります。


▲ 制限・禁止が可能な例外的には該当しない場合

制限・禁止が可能な例外的には該当しないが、副業を認めたくない場合は、説得するしかありません。

説得する場合、副業に代わる代替案を示すことも方法の一つです。

③ 容認することができない副業を開始したのならば、「面談・注意・指導」 をする

まずはその従業員と面談をして、副業先の事業内容を把握することが必要です。
そして、容認できない副業をしているのであれば、説得・注意・指導をすることが必要です。
副業をしていることを知りながら、何らの説得・注意・指導をすることなく放置していますと、会社は副業を容認していたこととされてしまいますので注意が必要です。

なお、注意・指導する場合は、下記にお示ししました、【注意・指導・教育の6大原則】をご参考にしてください。

④ それでも副業を辞めなければ、「退職勧奨や懲戒処分」 を検討する

繰り返し注意・指導しても副業を辞めない時は、軽い懲戒処分を検討してみてください。
懲戒処分をするにあたっては、

・ その副業が企業秩序に悪影響を及ぼしているか?
・ その副業がその従業員の労務の提供に格別の支障を生じさせているか?

の観点から判断する必要があります。

しかし、基本的には先に述べましたように、就業時間外の副業は制限することは難しい。ことを念頭に置いて慎重に行ってください。

注意・指導・教育の6大原則

1 指導する人は限定しておく

指導は、指導する人によって、指導方針が分かれがちになります。
指導する人は、【直属の上司→部長→社長】 のように順番をあらかじめ決めておいたほうが望ましいです。

2 指導内容は具体的・明確に

社員に気を使って遠回しな言い方をしても伝わり辛いです。
指導はより具体的に、より明確にすべきです。

3 就業規則をよく読む

就業規則に則った指導が大切です。
日ごろから就業規則を整備し、指導する側も良く理解している事が大切です。

4 成果・面談の内容は具体的に残す

注意・指導の内容は、書面に残し、社員の弁解内容も書面に残すことが大切です。
仕事の成果は、具体的な数字で残すようにしてください。

5 注意・指導・教育は冷静に

注意・指導は、

① 目的が正当
② 手段が合理的

でなければなりません。

煽ってくる社員もいますので、指導する側がヒートアップしないようにすることも大切です。
また、人格攻撃はしないようにして、淡々とビジネスライフに注意・指導しましょう。

6 録音に注意

秘密録音であっても裁判では証拠になり得ます。
また都合の良い箇所のみを切り取って、証拠にされる恐れもあります。

ですので

・ 録音されていることを覚悟で注意・指導する
・ 録音に気付いたら、守秘義務の観点から止めるように言う。

事も大切です。

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