有期雇用労働 雇止め 
文責 社労士・井戸 憲一郎

有期雇用労働者の雇止め

令和2年8月14日付け 厚生労働省の発表によると、
新型コロナに起因する雇用調整の可能性のある事業所数は、80,490箇所
解雇、雇止め等の予定者数は、45,650人

だそうです。

そこで今回は、有期雇用労働者の雇止めについてご説明します。

有期雇用労働 雇止め 

1.雇止めとは

雇止めとは、次のように定義されます。

① 有期雇用労働者について
② 契約期間満了時に
③ 使用者が契約更新を拒絶し契約を打ち切ること

上記のように、契約期間満了時に使用者が契約更新を拒否するわけですから、当然の取り扱いのように思われがちですが、労働契約法によって、強い労働者保護が規定されているので注意が必要です。

雇止めが違法だとされ、「無効」だと判断されると、従前と同一の条件で契約更新されたと扱われます。

有期雇用労働 雇止め 

2.雇止めの法理

【雇止めの法理】を明文化した条文は、労働契約法19条に定められています。

労働契約法19条を要約しますと、下記のようになります。

労働契約法19条 要約

有期労働契約の「更新への期待」に合理的な理由がある場合、「更新への期待」よりも「更新拒絶の必要性」を優先すべきでない限り、雇止めは認められない。

すなわち、
「更新への期待」を持つことに合理的な理由がないのであれば、雇止めは有効になります。
また、労働者の「更新への期待」に合理的な理由があっても、更新拒絶の必要性がその期待より優先すべきであるのであれば、その雇止めは有効になります。

雇止めを有効に行うためのポイントは、いかに契約更新への期待を抱かせないか!にあるといえます。

有期雇用労働 雇止め 

3.「更新への期待」6つの要素

雇止めを有効に行うためのポイントは、【労働者に契約更新への期待を抱かせないか!】あると書きましたが、裁判所が示した判断をまとめると、6つの事情を総合考慮して、期待の合理性や強さを判断しています。
その6つの要素をまとめますと、

「更新への期待」の判断要素

要素① 業務の常用性又は臨時性
要素② 雇用の通算期間
要素③ 契約更新の回数
要素④ 契約期間・更新手続きなどの管理状況
要素⑤ 雇用継続への期待を持たせる言動
要素⑥ 雇用継続への期待を持たせる制度

となりますので、1つずつ見てゆきましょう

要素① 業務の常用性又は臨時性

業務の性質が、【常用的】なのか【臨時的】なのかによって、「更新への期待」は下記表のようになると思われます。

業務の性質 更新への期待
常用的 高い
臨時的 低い

すなわち、業務の性質が臨時的のほうが、「更新への期待」は、低いといえます。

要素② 雇用の通算期間

雇用の通算期間が、長くなるほど「更新への期待」は高まる。と言えます。

裁判例では、原則、1年未満であれば雇止めが認められています。

要素③ 契約更新の回数

更新の回数が増えるほど、要素⑥ 雇用継続への期待を持たせる制度
しかし、何回というような明確なラインはありません。

要素④ 契約期間・更新手続きなどの管理状況

「黙示の更新」だと、労働者に「契約は自動更新される」と言う期待が生まれてしまいます。

更新の管理方法としては、次の二つが大切だといえます。

① 更新時には、明確な基準(業務の必要性・従業員の適格性)で更新の判断を行うことが必要。
② 従業員には、判断の詳細を書面で渡す

要素⑤ 雇用継続への期待を持たせる言動

文字通り、雇用継続への期待を持たせるような言動は慎むべきです

要素⑥ 雇用継続への期待を持たせる制度

就業規則等に、1年以上の雇用を予定した規定があると、「更新への期待」は高まる。と言えます。
たとえば、年次有給休暇規定・休職規定・懲戒規定・配転規定・時間外労働命令規定 などです。

よって、有期雇用者と無期雇用者は就業規則を別に作る必要があるといえます。

雇止め

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