「不利益の説明必要」初判断 合併後に退職金ゼロ/最高裁

山梨県民信用組合(甲府市)の元職員12人が、合併に伴う労働条件の変更で
退職金がゼロになったなどとして退職金計約8,000万円の支払いを求めた訴訟の上告審判決で、
最高裁第2小法廷(千葉勝美裁判長)は19日、
「不利益な条件に変更する場合は、内容を具体的に説明するなどした上で同意を得る必要がある」
との初判断を示した。
企業側が賃金や退職金を大幅に減額する際、形式的な書類への署名押印にとどまらず、
労働者側に対する丁寧な説明を求めたと言える。
第2小法廷は、判断を示した点について十分な考慮がされていないとして、
東京高裁に審理を差し戻した。高裁では、請求を棄却した一審甲府地裁判決が
見直される可能性がある。
判決によると、原告らが所属していた旧峡南信用組合は2003年、
経営破綻回避のため山梨県民信用組合と合併。
その際、旧峡南職員の退職金の支給基準を変更し、原告らは同意書に署名押印した。
合併後に原告らが退職したところ、合併前の在職期間に関する全員の退職金が
ゼロになるなどしたため提訴。
一、二審は請求を棄却し、原告側が上告していた。

<解説>

退職金の減額に限らず、そもそも雇用契約や就業規則を従業員の不利益に変更する場合は、
原則として、従業員一人ひとりの個別の同意が必要です(労働契約法8条と9条)。
その同意を得る場合の方法として、今回の判例では、ただ単に同意書等に捺印を
させるだけではなく、変更の内容について従業員に対して丁寧に説明したうえで、
同意書にサインをさせる等の手続きをとる必要があることを明らかにしたものとなっています。