割増賃金(残業手当・休日手当・深夜手当)の計算の仕方について
従業員に残業を行わせるには、
● 36協定の締結・届出
● 割増賃金の支払い
が必要になります。
ここでは、割増賃金の計算方法について説明します。
割増賃金の種類と割増率
割増賃金は、「1.残業手当」・「2.休日手当」・「3.深夜手当」の3種類があります。
各々について説明します。
1.残業手当
支払う条件
1日8時間・週40時間を超えたとき
割増率
25%以上
2.休日手当
支払う条件
法定休日(週1日)に勤務させたとき
(所定休日に勤務させても支払う必要はありません)
割増率
35%以上
3.深夜手当
支払う条件
22時から5時までの間に勤務させたとき
割増率
25%以上
1時間あたりの賃金を計算する
時給制の場合と同じように、月給制の場合も1時間あたりの賃金に換算してから計算します。
1時間あたりの賃金に換算する仕方は、
月給÷1年間における1ヵ月平均所定労働時間
で計算します。
月給に含まれないもの
ここでいう月給には次のものは含まれません。
1.家族手当・扶養手当・子女教育手当
家族数に比例して支給する家族手当・扶養手当・子女教育手当は月給に含まれません。従って、家族数に関係なく一律に支給する場合は月給に含めます。
2.通勤手当
交通費・距離に比例して支給する通勤手当は月給に含まれません。従って、交通費・距離に関係なく一律に支給する場合は月給に含めます。
3.別居手当・単身赴任手当
別居手当・単身赴任手当は月給に含まれません。
4.住宅手当
月給に含まれない、「住宅手当」とは、
賃貸住宅・・・居住に必要な住宅の賃借のために必要な費用
持 家・・・居住に必要な住宅の購入、管理等のために必要な費用
に応じて算定される手当であり、手当の名称に関わらず、実質により判断します。
従って、住宅に要する費用以外の費用に応じて算定される手当や、費用にかかわらず一律に定額で支給される手当は該当しません。
● 月給に含まれない住宅手当の例
⑴ 賃貸住宅居住者には家賃の一定割合、持家居住者にはローン月額の一定割合を支給するもの
⑵ 家賃月額5~10万円のときは2万円、家賃月額10万円を超えるときは3万円を支給するもの
● 月給に含まれる住宅手当の例
⑴ 賃貸住宅居住者には一律2万円、持家居住者には一律1万円を支給するもの
⑵ 扶養家族がある者には2万円、扶養家族がない者には1万円を支給するもの
⑶ 全員に一律に定額で支給するもの
5.臨時の手当(結婚手当、出産手当、大入り袋など)
結婚手当、出産手当、大入り袋などの臨時の手当月給に含まれません。
計算の仕方 例
基本給235,000円、精皆勤手当8,000円、家族手当20,000、通勤手当15,000円、年間所定休日122日、1日の所定労働時間が8時間の場合
365-122(1年間の所定出勤日数)×8(1日の所定労働時間)/12=162 (1年間における1ヶ月平均所定労働時間)
243,000(基本給+精皆勤手当)÷162(1年間における1ヵ月平均所定労働時間)=1,500円(1時間あたりの賃金)
管理職と割増賃金
管理職(管理監督者)の地位にある従業員に対しては時間外手当、休日手当を支払う必要はありません。
ここでいう管理監督者とは
「労働条件の決定その他の労務管理について経営者と一体的な立場にある者」
とされており、「部長」「営業所長」といった肩書きではなく、実態により判断します。
肩書きだけでは管理監督者とはいえません。
例えば、「地位に応じた相応の賃金が支払われている」といった待遇とともに「部下の採用、給与の決定など人事管理の権限を持つ」「出退勤時間が本人の裁量に任されている」といった立場にあることが必要です。
営業上の理由で全員に「課長」という肩書きが与えられている部署があったとしても、その従業員がこのような立場になければ管理監督者とはいえません。
なお、深夜手当は管理監督者に対しても支払う必要があります。
管理職の判断の仕方
1.職務内容と責任権限は管理監督者にふさわしいか?
2.勤務態様の実態が労働時間等の規制になじまない場合に限定しているか?
3.定期給与、ボーナスなどで一般社員より優遇されているか?
4.スタッフ職の場合、経営上の重要事項に関する企画立案業務を担当しているか?
歩合給制の割増賃金の計算の仕方
歩合給制とは「出来高払制」「請負給制」ともいい、「売上げに対して○%、契約成立1件に対して○円」といった一定の成果に対して定められた金額を支払う賃金制度のことです。
歩合給制であっても法定労働時間を超えて労働した場合は、その部分について割増賃金が必要です。
歩合給制の割増賃金の出し方は、歩合給の額を総労働時間で割って1時間あたりの賃金を計算します。
以下、具体的な計算の仕方を説明します。
歩合給制の割増賃金の計算の仕方 具体例
ある月の実績給(歩合給)の合計が180,000円であった労働者が、その月に法定時間外労働18時間を含めて180時間労働していた場合
180,000円÷180時間=1,000円・・・・・1時間あたりの歩合給(歩合給÷総労働時間)
1,000円×0.25=250円 ・・・・・1時間あたりの歩合給の割増賃金
250円×18時間=4,500円 ・・・・・歩合給の割増賃金額
振替休日と代休の割増賃金の計算の仕方
振替休日
振替休日とは、法定休日を他の勤務日とあらかじめ交換して労働させ、事前又は事後に休日を与えた場合を言います。
振替休日は、交換したわけですから休日労働にはなりません。よって 休日手当は不要になります
代休
代休とは、勤務日の振替(交換)を行わずに法定休日に労働させ、事後に代休を与えた場合を言います。
休日労働になります。よって、休日手当は必要になります)
振替休日と代休の意味の違いをしっかり押さえて給与計算をする必要があります
割増賃金を計算する上で、よくある質問
1日の労働時間は実際の出勤時間から起算する
質問:1
当社は午前9時から午後6時まで(正午から午後1時まで休憩時間)を勤務時間としていますが、掃除当番にあたる者を交代で午前8時に出勤させています。
この場合、「早出残業」として午前8時から9時までを時間外労働として考えればよいでしょうか?
回答:1
1日の労働時間は、定められた就業時間にかかわらず、実際に出勤した時間から起算します。
御社の例ですと、午前8時に早出出勤した従業員については午後5時以降を時間外労働として取り扱うことになります。
なお、遅刻により午前10時に出勤した場合は、午後7時までは時間外労働になりませんので、時間外手当を支払う必要はありません。
残業手当の一律支給は要注意
質問:2
残業手当の計算が面倒なので、実際の残業時間にかかわらず「業務手当」として一律で支給したいのですが?
回答:2
一律支給する場合には、業務手当が残業手当の定額払いであることを就業規則等に明記することが必要です。
また、実際の残業時間から計算した時間外手当より「業務手当」が低い場合はその不足額も合わせて(つまり、実際に計算した時間外手当全額を)支払わなければなりません。
なお、実際の残業手当と業務手当との過不足を翌月に繰り越して相殺することはできません。
労働時間の端数切り捨てはできません
質問:3
早番と遅番の引き継ぎやレジの精算でどうしても所定退勤時刻から5分ぐらい長引いてしまいます。
ただ、毎日の勤務時間を1分単位で集計するのは大変なので、15分未満で切り捨て、15分以上を30分に切り上げて計算したいのですが?
回答:3
1日の労働時間は1分単位で計算しなければなりません。
端数を切り上げることは問題ありませんが、切り捨てることはできません。
ただし、1か月の労働時間を通算して30分未満の端数が出た場合には切り捨て、30分以上の端数を1時間に切り上げて計算することは認められています。
割増賃金の計算過程で
●1時間あたりの賃金額および割増賃金額に1円未満の端数が生じた場合
●1か月間の時間外労働、休日労働、深夜労働について、それぞれの割増賃金に1円未満の端数を生じた場合
は、就業規則等に定めたうえで「50銭未満の端数を切り捨て、それ以上を1円に切り上げる」
ことができます。
質問:4
皆勤手当ては割増賃金の計算の基礎に含めるべきか?
回答:4
割増賃金計算の仕方は、岐阜ひまわり事務所にお尋ね下さい
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