新型コロナに伴う雇用調整助成金 Q&A Ⅱ

文責 社労士・井戸 憲一郎
出典 厚生労働省HPより

前回に続き、今回も、雇用調整助成金 新型コロナに関するQ&Aについてです。

新型コロナウイルスに伴う雇用調整助成金について

《外国人を雇用する事業主について》
雇用調整助成金は、外国人の方を雇用する事業主も対象になりますか?

支給要件を満たす事業主であれば、雇用保険被保険者である従業員の国籍は問われません。
また、R2年4月1日~6月30日までは雇用保険被保険者でない労働者の休業も助成金の対象に含まれます。

《休業させる場合の留意点》
新型コロナウイルスに関連して労働者を休業させる場合、どのようなことに気をつければよいのでしょうか?

労働基準法第26条では、使用者の責に帰すべき事由による休業の場合には、使用者は、休業期間中の休業手当(平均賃金の100分の60以上)を支払わなければならないとされています。
また、厚労省は、「労働者がより安心して休暇を取得できる体制を整えていただくためには、就業規則等により100分の60以上を支払うことを定めていただくことが望ましい」と言っています。
この場合であっても支給要件に合致すれば、雇用調整助成金の支給対象になります。
※ 不可抗力による休業の場合は、使用者の責に帰すべき事由に当たらず、使用者に休業手当の支払義務はありません。

ここでいう不可抗力とは、
① その原因が事業の外部より発生した事故であること、
② 事業主が通常の経営者として最大の注意を尽くしてもなお避けることのできない事故であること
の2つの要件を満たすものでなければならないとされています。

例えば、自宅勤務などの方法により労働者を業務に従事させることが可能なのに、休業の回避について通常使用者として行うべき最善の努力を尽くしていないと認められた場合には、使用者の責に帰すべき事由による休業に該当する場合があり、休業手当の支払が必要となることがあります。

《感染した方を休業させる場合》
労働者が新型コロナウイルスに感染したため休業させる場合、休業手当はどのようにすべきですか。

新型コロナウイルスに感染しており、都道府県知事が行う就業制限により労働者が休業する場合は、一般的には「使用者の責に帰すべき事由による休業」に該当しないと考えられますので、休業手当を支払う必要はありません。

休業手当が受けられなくとも、社会保険に加入されている方であれば、要件を満たせば、傷病手当金が受けられます。

《感染が疑われる方を休業させる場合》
新型コロナウイルスへの感染が疑われる方について、休業手当の支払いは必要ですか?

「帰国者・接触者相談センター」でのご相談の結果を踏まえても、職務の継続が可能である方について、会社の自主的判断で休業させる場合には、一般的に「使用者の責に帰すべき事由による休業」に当てはまり、休業手当を支払う必要があります。

《発熱などがある方の自主休業》
労働者が発熱などの症状があるため自主的に休んでいます。休業手当の支払いは必要ですか?

新型コロナウイルスかどうか分からない時点で、発熱などの症状があるため労働者が自主的に休まれる場合は、通常の病欠と同様に取り扱ってください。
一方、例えば発熱などの症状があることのみをもって一律に労働者に休んでいただく措置をとる場合のように、使用者の自主的な判断で休業させる場合は、一般的には「使用者の責に帰すべき事由による休業」に当てはまり、休業手当を支払う必要があります。

《新型インフルエンザ等対策特別措置法に基づく緊急事態宣言や要請・指示を受けた事業の休止に伴う休業》
新型インフルエンザ等対策特別措置法に基づく緊急事態宣言や要請・指示を受けて事業を休止する場合、労働基準法の休業手当の取扱はどうなるでしょうか?

上記でもご説明しましたが、労働基準法第26条では、使用者の責に帰すべき事由による休業の場合には、使用者は、休業期間中の休業手当を支払わなければならない。としています。
しかし、不可抗力による休業の場合は、使用者に休業手当の支払義務はありません。

不可抗力による休業と言えるためには、
① その原因が事業の外部より発生した事故であること
② 事業主が通常の経営者としての最大の注意を尽くしてもなお避けることができない事故であること
という要素を両方の要件を満たす必要があります。

①に該当するものとしては、例えば、今回の新型インフルエンザ等対策特別措置法に基づく緊急事態宣言や要請などのように、事業の外部において発生した、事業運営を困難にする要因が挙げられます。
②に該当するには、使用者として休業を回避するための具体的努力を最大限尽くしていると言える必要があります。
具体的な努力を尽くしたと言えるか否かは、例えば、
・ 自宅勤務などの方法により労働者を業務に従事させることが可能な場合において、これを十分に検討しているか
・ 労働者に他に就かせることができる業務があるにもかかわらず休業させていないか
といった事情から判断されます。

新型コロナウイルスに伴う雇用調整助成金について

《休業手当の支払いが不要な場合の賃金》
新型コロナウイルス感染症に関連して労働者を休業させ、休業手当の支払いが不要である場合について、労働者に対する賃金の支払いは不要でしょうか?

事業主は、従業員に対し、特に配慮を必要とする方について、その事情を考慮して対策を行う等して労働条件の改善に努めなければならない。
とされており、これは新型コロナウイルス感染症に関連して労働者に休んでいただく場合も同様です。
そのため、新型コロナウイルス感染症に関連して労働者を休業させ、労働基準法の休業手当の支払いが不要である場合についても、就業規則等により休業させたことに対する手当を支払うことを定めていただくことが望ましい。と厚労省は言っています。

《年次有給休暇と病気休暇の取り扱い》
新型コロナウイルスに感染している疑いのある労働者について、一律に年次有給休暇を取得したこととする取り扱いは、労働基準法上問題はありませんか?

年次有給休暇は、原則として労働者の請求する時季に与えなければならないものなので、使用者が一方的に取得させることはできません。
従業員が有給休暇の取得を請求して初めて取得させることができるのです。

《パートタイム労働者等への適用について》
パートタイム労働者、派遣労働者、有期契約労働者などの方についても、休業手当の支払いや年次有給休暇の付与等は必要でしょうか?

労働者であればパートタイム労働者、派遣労働者、有期契約労働者など、休業手当の支払いや年次有給休暇付与が必要となっております。

 

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